IASBは、IAS第1号「財務諸表の表示」の修正「特約条項付の非流動負債」を公表しました。

IASBは、IAS第1号の修正「特約条項付の非流動負債」(本修正)を最終決定し、公表しました。


IASBは2020年1月に、企業が負債を流動または非流動にどのように分類するかを明らかにしたIAS第1号の修正(2020年修正)を公表しました。この修正は2023年1月1日以降開始する事業年度より発効されることになっていました。

2020年修正の要求事項の1つとして、企業が負債の決済を延期する権利の有無が、特定の条件(例:財務制限条項)の遵守に左右される状況では、企業が報告期間の末日時点で当該条件を遵守している場合のみ、報告期間の末日時点に負債の決済を延期する権利を有することを明確にした点があります。この要求事項が適用されると、報告期間の末日時点で、報告期間後少なくとも12か月にわたり負債の決済を延期する権利を有する(すなわち、負債が非流動に分類される)ためには、貸手が報告期間の末日後に特定の条件の遵守を要求している場合でも、報告期間の末日時点で当該条件を遵守していなければなりません。


その後2020年12月、利害関係者からのフィードバック及び質問に対応し、IFRS解釈指針委員会(IFRS-IC)は2020年修正がどう適用されるかを3つのシナリオについて検証した暫定的なアジェンダ決定を公表しました。しかしながら、適用結果についてフィードバックや複数の懸念を受けたため、暫定的なアジェンダ決定は最終化されませんでした。IFRS-ICは、2020年修正の開発時には考慮していなかった新たな情報を重視し、寄せられたフィードバックをIASBへ報告しました。


IASBは新たな情報を考慮して、本修正を提案することにしました。本修正の公開草案が2021年11月に公表され、2022年3月21日を期限としてコメントが募集されました。
寄せられたコメントを踏まえ、IASBは今回IAS第1号の修正「特約条項付の非流動負債」を最終決定し、公表しました。
※本修正の公開草案公開時の解説記事は、以下のリンク先よりご確認ください。
IASBは公開草案として、修正案「特約条項付の非流動負債」を公表しました。(2021年12月21日)


本修正によって、報告期間の末日後に遵守されなければならない特約条項は、報告期間の末日時点での流動または非流動の分類に影響を与えない点が明確になりました。ただし、負債の決済を延期する権利が左右されるような特約条項への遵守を報告期間後12か月以内に要求されていて、当該負債を非流動に分類した企業は、当該特約条項についての情報を財務諸表で開示することが要求されます。本修正は2024年1月1日以降開始する事業年度に発効します。なお、早期適用が認められていますが、2020年修正も同時に適用しなければなりません。


2020年修正は、本修正により変更されない要求事項(主に決済の意義の明確化)を含んでいますが、このような要求事項についても、発効日が2024年1月1日に変更されます。


なお、2020年修正を早期適用する場合、早期適用開始が本修正公表後か公表前かで、取扱いが以下のように異なります。
(1)2020年修正を本修正公表後に早期適用開始する場合
本修正を2020年修正と同じタイミングで早期適用しなければならない。
(2)2020年修正を本修正公表前に早期適用開始する場合
本修正の早期適用は要求されない。2020年修正のみを早期適用している場合、その旨を開示しなければならない。


IASBのプレスリリースはこちらよりアクセス頂けます(リンク先に移動します)。