IASBは公開草案として、修正案「特約条項付の非流動負債」を公表しました。

IASBは、公開草案としてIAS第1号「財務諸表の表示」の修正案「特約条項付の非流動負債」を公表しました。当該修正案は、2020年に公表された「負債の流動又は非流動への分類」(IAS第1号の修正。関連する解説記事はこちら。)で要求されている、金融負債分類方法の修正とともに、新たな表示及び開示の要求事項を提案しています。

2020年に公表された「負債の流動又は非流動への分類」(IAS第1号の修正)では、企業が報告期間の末日現在で、負債の決済を報告期間後少なくとも12か月にわたり延期する権利を有している場合には、当該負債を非流動に分類する、としていました。

これに対し、今回の公開草案では、企業が決済を延期する権利が、報告期間後12か月以内に所定の条件を遵守することを条件としている場合には、関連する負債は、企業が報告日後に当該条件を遵守するかどうかに応じて、12か月以内又は12か月後以降のいずれかに返済すべきものとなる可能性がある点が指摘されました。
例えば、3月決算の企業における長期借入金について、9月末(報告期間後12か月以内)の財政状態に基づく条件に遵守しているか評価する所定の条件(特約条項)が付されている場合、9月末になって初めて12か月以内又は12か月後以降のいずれかに返済すべきものとなるかが判明します。このため、報告日現在でいつ返済するか判定するのは難しいとの指摘がありました。
また、所定の条件が企業の事業の季節性や将来の業績の影響を織り込んで設定されている場合、報告日での評価は有用な情報を提供しない可能性が懸念されました。

このような点を踏まえ、当該修正案では以下の提案をしています。

① 企業が負債の決済を延期する権利が、報告期間後12か月以内に特約条項に準拠することを条件としている場合に、負債の流動又は非流動への分類に影響を与えない。
② ①に従い、負債を非流動に分類した場合には、企業は次のようにしなければならない。
・対象となる非流動負債を、財政状態計算書において、他の非流動負債とは区分して表示
・特約条項に関する情報の開示
(遵守することを要求されている条件、報告期間末日現在の条件ならば当該条件を遵守しているか、報告期間の末日後に当該条件を遵守すると見込んでいるか、及びどのように遵守すると見込んでいるか)

例えば、3月決算の企業における長期借入金に、9月末の財政状態に基づく条件の遵守を評価する特約条項が付されている場合、上記①に該当すると考えられます。このため、当該長期借入金に関し、②の区分表示及び開示が必要となります。

本公開草案はIAS第8号に従い、遡及適用しなければならないとされています。
また、本修正内容の発効日は明記されていませんが、2024年1月1日以後の適用が想定されています。さらに、早期適用は認められる旨が提案されています。

なお、2020年に公表された「負債の流動又は非流動への分類」(IAS第1号の修正)は2023年1月1日以後開始する事業年度についてIAS第8号に従って遡及適用しなければならない、とされていましたが、今回の公開草案の公表に伴い、同じく2024年1月1日以後の適用が想定されています。


当該修正案の詳細は、下記よりご覧ください。(リンク先に移動します。)
20211119.pdf (asb.or.jp)