2015年6月30日、企業会計基準委員会(ASBJ)は、「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」(以下「修正国際基準」という。)を公表しました。英文名称は、Japan’s Modified International Standardsといい、略称はJMISです。
以下では、修正国際基準の概要を記載します。
<公表の背景>
2013年6月、企業会計審議会から「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」が公表されました。この中で、国際会計基準(IFRS)を任意適用する積上げ方法としてIFRSのエンドースメントを挙げています。これは、IFRSの個別基準を一つ一つ検討し、必要があれば一部基準を削除又は修正して採択する仕組みを設けるものです。これを受け、ASBJでは作業部会を設置、検討を進め、公開草案を公表し、寄せられた意見の審議を行い、今回の修正国際基準の公表となりました。
<修正国際基準とピュアIFRSとの差異>
修正国際基準は、ピュアIFRS(IASBが公表している基準)から一部の基準を削除又は修正した会計基準です。削除又は修正する項目は、日本の会計基準における基本的な考え方及び実務上の困難さの観点から、なお受け入れ難いとの結論に達したもののみを対象とし、必要最小限とする方針が示されています。
修正国際基準では、「のれんの会計処理」と「その他の包括利益の会計処理」の2つを定めています。
<修正会計基準第1号 「のれんの会計処理」の概要>
ピュアIFRSでは、のれんの償却はできません。一方、修正国際基準では、我が国における会計基準に係る基本的な考え方との相違が大きいため、のれんを合理的な方法で規則的に償却する処理を示しています。
<企業結合で取得したのれん>
- 効果の及ぶ期間(耐用年数)にわたり、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却。耐用年数は20年を超えることはできない。
<関連会社又は共同支配企業に対する投資に係るのれん>
- 効果の及ぶ期間(耐用年数)にわたり、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却。耐用年数は20年を超えることはできない。
- 当該投資に係る減損損失について、まず投資に係るのれんに配分する。また、のれんに配分された減損損失の戻入れを禁止している。
修正国際基準では、開示についてもピュアIFRSから一部、修正がなされています。
<修正会計基準第2号 「その他の包括利益の会計処理」の概要>
ピュアIFRSにおいて、ノンリサイクリング(その他の包括利益から当期純利益への組替調整を行わない)処理を要求している項目のうち、3項目については修正国際基準と我が国の会計基準に係る基本的な考え方との相違が大きいため、リサイクリング処理を求めています。
<その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品への投資の公正価値の変動>
- 当該投資における認識の中止時及び減損損失の認識時に、その他の包括利益の累計額を純損益(P/L)に組替調整(リサイクリング処理)として振り替える。
- 減損損失の戻入れは認められない。
<純損益を通じて公正価値で測定する金融負債の発行者自身の信用リスクに起因する公正価値の変動>
- 当該金融負債における認識の中止時に、その他の包括利益の累計額を純損益(P/L)に組替調整(リサイクリング処理)として振り替える。
<確定給付負債又は資産(純額)の再測定>
- 原則として、各期の発生額について、従業員の平均残存勤務期間で按分した額を毎期、その他の包括利益累計額から純損益に組替調整(リサイクリング処理)として振り替える。
- 確定給付制度の廃止・縮小・清算が発生した場合、再測定の累計額のうち、確定給付制度の廃止等に関連する金額を純損益に組替調整(リサイクリング処理)として振り替える。
修正国際基準では、開示についてもピュアIFRSから一部、修正がなされています。
<適用時期>
2016年3月31日以後終了する連結会計年度に係る連結財務諸表から適用可能です。また、四半期連結財務諸表は、2016年3月31日以後開始する連結会計年度に係る四半期連結財務諸表から適用可能です。
<その他>
修正国際基準が基準化されたため、我が国では日本基準、米国基準、ピュアIFRS、修正国際基準(JMIS)と4つの基準を適用できることになります。
企業会計基準委員会(ASBJ)のプレスリリースはこちら(リンク先に移動します)。
「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」の公表|企業会計基準委員会 (asb-j.jp)